2013年3月26日火曜日

中国国家主席のアフリカ歴訪:新たな「帝国主義」に懸念高まる

_




ロイター 2013年 03月 25日 13:11 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE92O02620130325

焦点:中国国家主席のアフリカ歴訪、新たな「帝国主義」に懸念高まる

[ダルエスサラーム(タンザニア) 25日 ロイター]  
 中国の習近平国家主席は、就任後初の外遊の一環としてアフリカ歴訪を開始した。
 アフリカ大陸は世界第2位の経済大国となった中国にとって、資源獲得の面で重要性が増しているほか、有望な市場として期待が高まっている。

 ただ、中国とアフリカの経済関係が深化する一方、アフリカ諸国の間では、資源が中国に奪い取られ、中国から輸入される最終製品への依存度が高まっていることに懸念も広がっている。

 アフリカでは一般的に、西側諸国の影響力とのバランスを取る存在として中国が認識されているが、関係の成熟化につれて、政策当局者やエコノミストからはもっとつり合いの取れた貿易関係を求める声が出始めている。

 ケニアのシンクタンク「インター・リージョナル・エコノミック・ネットワーク」の代表者、ジェームス・シクワティ氏は、習主席アフリカ歴訪の目的について、中国のアフリカ進出は単に資源だけが目的だという懸念を和らげることにあると指摘する。

 欧米とは異なり、人権問題などでとやかく言ってこない中国による支援はアフリカで歓迎されているものの、
 中国の思惑をめぐる懸念は日増しに強くなっている。

 ダルエスサラームの大学生、Lisa Mgayaさんは「中国は多くの開発支援を寄せてくれているが、何かしらの見返りを欲しているのは間違いない」と指摘。
 「中国には警戒するべき」と語る。

■<BRICS首脳会議にも出席>

 ナイジェリア中銀のラミド・サヌシ総裁は今月、英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿し、
 中国とアフリカの貿易不均衡は本質的に「植民地主義」だとし、
 新たな形の帝国主義にアフリカ大陸がさらされることに警戒感を示した。

 中国はこうした見方を嫌う。

 中国の鐘建華・アフリカ事務特別代表(特使)は
 「西側諸国の遺産は、アフリカは西側諸国に感謝すべきだとの感情であり、自身が西側ほど良くないことをアフリカは認識すべきとの考えだ」
と指摘。
 「それは容認できない」
と述べた。

 習主席は24日、タンザニアの商業都市ダルエスサラームに到着。
 既に同国のキクウェテ大統領との間で、10数件の貿易契約などに調印した。
 同地では演説も行う予定だ。

 契約には、港湾や工業団地の共同開発のほか、通信インフラ向けの優遇条件付き融資やタンザニア政府向け無利子借款が含まれている。
 融資やプロジェクト規模の詳細は明らかにされていない。

 習主席は26─27日に南アフリカを訪問し、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会議に出席。
 その後はコンゴ共和国も訪れる。

 中国は昨年、コンゴから54億トンの原油を輸入。
 全体の2%にすぎないが、将来的に拡大する可能性もあるとみられている。

( 記者 Fumbuka Ng'wanakilala 、George Obulutsa 執筆協力 Ben Blanchard in Beijing 執筆 Richard Lough;翻訳 川上健一;編集 山川薫)

 
 アフリカはヨーロッパの裏庭。
 そこへ入っていけば、相当な非難にさらされるのは覚悟しないといけない。
 アジアで傲慢にやっている限りは、ヨーロッパはそれを国家合理主義とみる。
 おなじことをアフリカでやると帝国主義になる。
 そんなもんだ。
 ヨーロッパだって、裏庭をあらされるのは腹に据えかねるほどに悔しいはずだ。



JB Press 2013.03.26(火) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37429

アフリカと中国:鉱物資源以上の関係
(英エコノミスト誌 2013年3月23日号)

 中国の対アフリカ貿易は増え続けている。
 新植民地主義への懸念は行き過ぎだ

 北京から来た5人の旅行者グループが、自家用飛行機でケニア山上空を低空飛行するとリフトバレーへと分け入り、黄色い幹と霧のような細い枝を持つ、ユーカリノキなどの木々に囲まれたほこりっぽい滑走路に着陸した。

  5人は、シマウマとキリンが闊歩する草原を横切り、写真を撮りながら、アフリカスイギュウが突進してこないかと警戒していた。
 食卓についた5人は、空腹だがくつろいでいる様子だった。

 グループに2人いる主婦の片方が「去年はお友達何人かと南極に行ったの」と言い、「iPhone(アイフォーン)」を出して永久凍土の上にたたずむペンギンの群れの写真を見せてくれた。

■太くなり、多様化する貿易のパイプ

 アフリカにやって来る中国人の数は増える一方で、観光や労働、貿易に向いた場所と見られるようになっている。
 アフリカ在住の中国人の数は、10年前には数千人程度だったが、
 今は推計100万人に達し、さらに増え続ける一方だ。

 中国は、南アフリカへの入国者数で第4位。
 ここには中国の国家主席に就任したばかりの習近平氏もが含まれる予定だ。
 国家主席として初の海外歴訪で、習氏はタンザニアとコンゴ共和国にも向かう。

 そもそも中国がアフリカに惹かれるに至ったきっかけは明白だ。
 サハラ砂漠とカラハリ砂漠の間には、中国の産業界が求める原材料が数多く眠っている。

 先ごろ、中国は米国を追い抜き、世界最大の原油純輸入国となった。
 アフリカから中国への輸入額の約80%を、鉱産物が占めている。

 中国はアフリカにとって最大のビジネスパートナーであり、貿易額は1660億ドルを超えている。
 しかし、そのすべてが鉱物資源ではない。
 アフリカへの輸出品目は多様だ(上図参照)。
 機械類がその29%を占める。

 中国からアフリカへの直接投資の規模は、貿易額に比べて数字による把握が難しい。
 2012年の夏の時点で、中国の商務大臣を務める陳徳銘氏は、投資額は
 「2009年から60%増加して、147億ドルを超える」
と発言した。


 同時期に、中国の駐南アフリカ大使を務める田学軍氏は
 「中国からアフリカに対する各種の投資の額は400億ドルを超える」
と述べている。
 どうやら、最初の数字は、アフリカへの投資のうち政府に報告されたものの額らしい。
 2つめの数字には、世界中の租税回避地から流れ込んだ中国ファンドによる投資の推計値が含まれている。

 中国とアフリカのつながりは、過去数年の間に拡大した。
 両者の関係は、今ではアフリカそのものと同じと言っていいほど多様化している。

 とはいえ習国家主席が、アフリカ各国すべてを1人で代弁できる指導者のメールアドレスを探したとしても、そのようなものは見つからないだろう。
 それはかつて、ヘンリー・キッシンジャー氏が欧州全体を1人で代弁できる指導者の電話番号を見つけるのに苦労したという逸話を彷彿させる。

 最近まで、中国は、アルジェリア、ナイジェリア、南アフリカ、スーダン、ザンビアなど、少数の資源大国に重点を置いてきた。

 しかし今は、エチオピアやコンゴのような、鉱物資源が少なかったり採取しにくかったりする国々が注目を集め始めている。
 これは、資源のない地域にも事業を広げる中国企業が増えているという要因が大きい。

 国営企業が民間会社と競合しており、どちらも中国国内よりもはるかに大きな利ざやに魅力を感じている。
 誕生間もない中国のプライベートエクイティファンドもアフリカに進出し始めている。

■決して中国の言いなりではないアフリカ諸国

 アフリカ側も中国の攻勢にただ押し切られているわけではない。
 各国政府は驚くほど積極的に自己主張している。

 アフリカでも最も若い国、南スーダンから真っ先に追放されたのは中国人だった。
 劉英才氏は、中国とマレーシアが出資し、南スーダン政府にとって最大の顧客である石油会社ペトロダールの現地法人社長を務めていたが、8億1500万ドルに上るとされる原油「窃盗」に荷担した嫌疑で追放された。

 コンゴ民主共和国はキブ地方で不正を働いた2人のコモディティー(商品)トレーダーを追い出した。
 アルジェリアの裁判所は中国企業2社に対して、贈賄があったとして公共入札への参加を禁じた。
 ガボンの政府高官も、自国に不利な資源取引を破棄した。
 ケニアと南アフリカの環境保護運動家は中国に対し、象牙とサイの角の取引を停止するよう要請している。

 アフリカ諸国のエリートは、中国を新興国の中では最大のパートナーと認めているが、決して唯一のパートナーとは考えていない。
 ブラジル、ロシア、インド(この3カ国は中国と同じくBRICSに属している)に加えて、トルコ、韓国を含む数カ国が中国の道に続いている。

 インド企業の取引額は、中国とアフリカ間の貿易額の約3分の1に達しており、この数字が50%に近づきつつあるとの推計もある。
 3月26日と27日に、BRICSの首脳会談が南アフリカで開かれるのは偶然ではない。
 この地では、BRICS諸国は互いに競い合っているのだ。

 アフリカにおける中国のイメージも、かつては猜疑心の混じったものだったが、今では変化しつつある。

■中国に対するイメージに変化

 ビジネスで中国との競争にさらされている人々、特に農業や小売り、小商いといった分野に関わる人たちは、今でも不満を述べている。
 マラウイ、タンザニア、ウガンダ、ザンビアでは、新たな法律で、中国人が事業をできる産業や地域が制限されている。

 しかし、中国人が仕事を生み、技術を移転し、地域経済にお金を落としてくれる、と述べるアフリカ人は増えている。
 こうした変化は、
 アジアの超大国に対する恐怖心が最も強い小国で特に顕著だ。

 ザンビアのマイケル・サタ大統領は、野党だった2011年までは長い間中国に批判的だったが、ひとたび政権の座に就くと態度を変えた。
 2012年に、同大統領は中国のインドの事業利権を激しく非難した労働大臣を降格処分とした。
 さらに、自身が率いる与党・愛国戦線と中国共産党との連携について話し合うために、副大統領を北京に派遣している。

 アフリカの民主主義はこれまでのところ悪影響を受けていない。
 中国は人権侵害には目をつぶりつつも、民主主義的な制度や慣習を損なうようなことはしていない。

 ジンバブエでは、中国はロバート・ムガベ大統領に協力し続けているが、野党の民主変革運動との関係も築き、党首のモーガン・ツァンギライ氏を北京に招いている。
 中国の指導部は、2012年のセネガルの民主的な政権交代を受け入れ、2005年に外交上の承認国を台湾から中国に変えたアブドゥライ・ワッド大統領の退陣も容認した。


 中国の存在感の高まりが引き金となって生じたその他の一般大衆の不安も、根拠のないものであることが判明しつつある。
 中国は武力衝突を誘発していない。
 逆に中国が仲裁者の役割を果たしたケースもある。
 もっとも、その動機は自らの利益に基づくものだった。

 スーダンと南スーダンはどちらも中国と多額の貿易を行っている。
 2012年に両国が戦争の危機に直面した際には、中国が他の大国とともに外交ルートで仲裁に入った。

■南アやナイジェリアでは中国人気が低下

 唯一、アフリカ最大の経済規模を持つ国では、中国の人気が低下している。
 こうした国々では、中国は競争相手と捉えられることが増えつつある。
 南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領は、長年にわたり中国とのビジネス関係を構築してきたが、2012年に入り、国内の批判勢力の圧力を受けて姿勢の転換を余儀なくされた。

 ナイジェリアでは、最近になって中央銀行総裁が「植民地主義の気配」を漂わしているという理由で中国を厳しく批判した。
 他のアフリカ諸国はこの発言を一笑に付した。過去にこうした国々の市場に強引に入り込んできたのは、多くの場合、ほかならぬナイジェリア人と南アフリカ人だったからだ。

© 2013 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。



ロイター 2013年 04月 1日 11:27 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE93001N20130401

中国国家主席がアフリカとの関係強化を表明、インフラに融資へ

[ブラザビル 29日 ロイター] 
 中国の習近平国家主席は29日、6日間のアフリカ歴訪の最後の訪問先コンゴ共和国で、インフラ事業に関する契約を締結し、アフリカ大陸との協力関係を強化する方針を表明した。

 習国家主席は、議会で
 「中国の将来、発展はアフリカにとってこれまでにないほどの機会をもたらす。
 アフリカの発展も中国にとって同様の機会となる」
と指摘。
 「中国とアフリカの人々により大きな恩恵をもたらすため、歴史的な機会獲得と協力強化に向けてともに取り組むことを期待する」
と述べた。

 中国は2013─2015年にアフリカに200億ドルの融資を提供する。
 アフリカ大陸は西側諸国の影響が強く、その代替として多くの政府は、中国がビジネスの分野で存在感を強めていることを歓迎している。

 国家主席はこの日、コンゴのドニ・サスヌゲソ大統領の故郷であるオヨに河川港を建設する6300万ドル規模のプロジェクトへの資金提供に合意した。
 コンゴはオヨに新たな経済特区を開発する計画だ。

 このほか、北西部での19メガワットの水力発電所建設や、ポワントノワールでの鉱石出荷に対応した新たな港建設などに関するプロジェクトも、中国から融資を受ける。

 中国はまた、約150億CFAフラン(2936万ドル)の補助金と無利息ローンの提供で合意。
 昨年起きた武器庫の爆発でほぼ破壊された首都ブラザビル東部のムピラで200軒の住宅と学校1校を建設する。


 「中国は2013─2015年にアフリカに200億ドルの融資を提供する
 ということは、「3年間で200億ドル」ということになる。
 「年間67億ドル」になる
 200億ドルというと、日本円で「約1兆8600億円」である。
 すごい!
 「年間6,200億円」となる。


 日本も取りこぼししないようには手は打ってきている。

サーチナニュース 2013/04/04(木) 10:33
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0404&f=politics_0404_003.shtml

日本が対アフリカ外交を強化し始めた理由=中国報道

  日本新華僑報によれば、菅義偉官房長官は3月27日の記者会見で、習近平国家主席がアフリカ各国を外遊した件について、
 「アフリカは今後、極めて重要な地区となる。日本は中国に負けないよう、アフリカとの友好に取り組み、経済協力を展開する」
と強調した。
 中国網日本語版(チャイナネット)は3日、
 「アフリカを巡って、日本が中国と駆け引きを展開している」
と報じた。以下は同記事より。

**********

  日本は敗戦後、米国を中核とする外交戦略を進めており、遠く離れたアフリカ大陸を重視してこなかった。
 これは日本の現実主義的な外交と密接に関連している。
 しかし日本は過去10年間でアフリカ重視を強化しており、中国との競争を激化させているが、これにはいくつかの理由がある。

①.1つ目の理由は、53カ国が存在するアフリカ大陸は「票の宝庫」とされていることだ。
 アフリカ諸国は国連で53の席を占めており(加盟国全体の28%)、国際構造の変化に伴い、アフリカ諸国の発言権も強まっている。
②.2つ目は、日本の英字誌『ザ・ディプロマット』が「アフリカは次のアジアになりうる」と指摘したとおり、アフリカ経済の影響力が大きくなりつつあるためだ。
 十数億人の人口を抱えるアフリカ大陸では経済が発展しつつあり、市場の潜在力も高まっている。
 アフリカの工業化推進に伴い、アフリカ経済の影響力と活力は、各国が見逃せないものとなっている。

  外務省の2012年版「ODA(政府開発援助)白書」によると、日本はサハラ砂漠から南の地域に、約17億3300万ドルを分配した。
 日本政府は対アフリカODAを毎年約1000億円としていたが、12年には2000億円に倍増させるなど、日本は外交以外でもアフリカに力を注いでいる。


 「年間2,000億円」というのは、中国に約1/3に相当する。

 まったく、よくやると思う。
 中国はこれまでアフリカに投資して利益を上げてきたから、その見返りという部分もあるが、日本はこれからである。
 そんなときに、「中国の3分の1」というのは破格である。




【中国はどこへむかうのか】


 
_