2013年3月31日日曜日

BRICSの協力の限界に要注意:開発銀行は本当にできるのか?


● BRICs



●新興5カ国(BRICS)首脳会議に集まった、左からシン・インド首相、習近平・中国国家主席、ズマ南アフリカ大統領、ルセフ・ブラジル大統領、プーチン・ロシア大統領=27日、南アフリカ・ダーバン(AFP=時事)



JB Press 2013.03.29(金) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37467

BRICSの協力の限界に要注意
開発銀行は本当にできるのか?

(2013年3月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 別荘を建てるために集まったが、いくらお金をかけるか、どこに建てるか、その代金を誰が支払うかで合意できない5人の友人グループを想像してみてほしい。

 大雑把に言ってそれが、BRICSの年次サミット(首脳会議)を終えたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国の指導者の立場だ。

■サミットで謳われた開発銀行創設計画

 彼らは全員、「BRICS開発銀行」が名案だと思っている。
 いまだに先進国が優位を占める国際通貨基金(IMF)や世界銀行から独立して発展途上国が管理する、発展途上国のための基金活用経路だ。

 彼らは27日、ダーバンサミットの閉幕にあたっての声明で、この考えを「実現可能かつ実行可能」と呼び、「インフラへの資金供給で効果を上げるだけの多額かつ十分な」資本を持った銀行を設立することで合意したと述べた。

 これによって、BRICS開発銀行が最初に提案された昨年のニューデリーでの会議から少しだけ状況は前進したが、大きな前進とは言えない。
 ロシアのアントン・シルアノフ財務相は正式な首脳会議に先立つ財務相会合の後、
 「前向きな動きはあるが、銀行の創設に関する決定はない」
と述べている。

 5カ国の政府高官は、銀行に500億ドルの資本を拠出することについて議論した。
 だが、各国が公平に資金を負担するのか、あるいは拠出金は各国の国内総生産(GDP)の大きな違いを反映すべきなのかに関する合意はなかった。
 中国の経済規模は、ロシアやインドの4倍、南アフリカの約20倍に上る。

 問題は、どの国が資金を負担できる、できないということだけではない。
 どの国が銀行に職員を派遣するのか、どこに資金を貸し出すのか、どの国の企業が銀行の気前良さから恩恵を受けるのかという問題でもある。

■本部はどこに置くのか?

 同じくらい議論を引き起こすのは、本部をどこに置くかという問題だろう。
 この点については他の多国間組織が証言してくれるはずだ。
 実際、英国が決して最大の拠出国でないにもかかわらず、欧州復興開発銀行(EBRD)がロンドンに本部を置くまでは、多くの駆け引きを要した。

 中国は、BRICSの中で圧倒的な力を持つ国として、間違いなく北京に銀行を置きたいと思っている。

 南アフリカは、開発銀行は――開発基金を最も必要とする大陸として――アフリカに焦点を合わせるべきだと主張している。
 これはヨハネスブルクが好ましいという思いを暗示しているのかもしれない。

 一部のBRICS観測筋は、ロンドンがまずまずの妥協点になるかもしれないと述べている。
 ロンドンは、どの国の縄張りでもなく、時差や交通の便という点でまずまず良い位置にある都市だ。

 だが、ロンドンにBRICS開発銀行を置くことになれば、「旧世界」に対する新興国の対抗勢力としてBRICSを推進するという目的が損なわれる可能性がある。

■BRICSが直面する3つの問題

 BRICSの指導者たちがこのような単なる事務処理作業でもっと良い結果を出せないとすれば、彼らが対処したいと思っている大きな問題、特にIMFをはじめとする既存の多国間組織で新興国が代表権を欠く問題について協力することなど期待できるだろうか?

 BRICSは、3つの基本的な困難に直面している。

 まず、首脳会議の写真撮影のために各国指導者がどのような順番で並ぶにせよ、
①.彼らは、中国が他国よりはるかに大きく、世界的にその経済力を誇示することにはるかに成功しているという現実
を避けることはできない。

 中国政府としては、国営の中国開発銀行や国の支配下にある他の大手銀行でできなかったどんなことをBRICS開発銀行を通じて達成できるのか思案することになるだろう。

②.次に、BRICSはグローバルな経済統治について共同戦線を張りたいと思っているが、実際にそれができることを示さなければならない。
 フランスのクリスティーヌ・ラドルガ氏が専務理事に任命された2011年のIMFの指導者選出で、BRICSが単一候補を支持できなかったことは有名だ。

③.最後に、BRICS内の相違点は類似点と同じくらい大きい。
 ブラジル、ロシア、南アフリカは資源輸出大国だ。
 これに対して中国とインドは輸入国だ。

 中国とインドの間には国境を巡る緊張があり、中国とロシアの間には中央アジアでの影響力を巡る競争がある。
 中国は共産主義国で、ロシアは旧共産主義の独裁主義国、それ以外は民主主義国だ。

■現実的な姿勢が肝心

 ダーバンサミットは失敗ではなかった。
 通貨危機と戦うために合意された1000億ドルの基金は、その実際的なメリットは限られているかもしれないが、政治的なコミットメントを示す有益な声明だ(新設される基金にできて、各国中央銀行による急場の協調行動にできないこととは、一体どんなことか?)。

 だが、BRICSの指導者は、自分たちが協力できる範囲について現実的な姿勢を保つよう気を付けなければならない。
 彼らがBRICS開発銀行を創設できるのなら、それは結構なことだ。
 できないのなら、その計画が政治的な恥になる前に撤回する必要がある。

By Stefan Wagstyl in London
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レコードチャイナ 配信日時:2013年3月30日 16時3分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=70747&type=0

BRICSの未来、さらに素晴らしいものに―中国国際問題専門家

 2013年3月27日、人民日報海外版コラム・望海楼は、同紙特約論説員で国際問題専門家の秦宏(チン・ホン)氏がBRICS (ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)について書いた文章を掲載した。

 BRICSは2001年にゴールドマン・サックスが経済学上の重要な概念として初めて提唱した。
 2003年のゴールドマン・サックスの報告書は、2050年にはBRICSが世界経済の指導的地位に立つと予言した。
 現在の事実は、この予測が余りにも控え目であったことを証明している。

 世界全体のGDP(国内総生産)に占めるBRICSの割合は12年前の3.5倍に増え、5分の1以上を占めるにいたった。
 貿易規模は3.2倍に増え、世界全体の6分の1を占めるにいたった。
 国際通貨基金(IMF)はBRICSのGDPは今年米国と肩を並べると予測している。
 12年前には米国の27%に過ぎなかった。

 BRICS全体の台頭は世界の発展を力強く促した。
 今世紀初頭の10年間でBRICSの平均成長率は8%を越えた。
 これは先進国の平均成長率2.6%を大幅に上回り、世界平均の4.1%も上回っている。
 世界金融危機発生後、BRICSは見事なパフォーマンスを見せ、世界経済の再生を促す重要なパワーとなった。
 IMFの統計によると、ここ3年間の世界経済の成長に対するBRICSの貢献率はそれぞれ40%、34%、79%に達した。

 経済力の高まりによって国際的影響力も急速に高まった。
 BRICSはいずれもG20のメンバーとなった。
 IMF改革後、BRICSのクオータは重大な問題の採決において拒否権を持つ15%に近づいた。
 特にBRICS協力体制の確立によって、BRICSは国際問題で行動を協調し、対外的に共同の声を発するための重要なプラットフォームを得た。
 BRICSはすでに公正で理に適った国際政治・経済の新秩序を確立するうえで軽視できない重要なパワーとなっている。

 先般、BRICSの経済発展・協力過程にいくつかの問題が生じ、国際世論からもBRICSは「色褪せる」のではないか、協力を維持できないのではないかといったネガティブな憶測が多く上がった。
 だが物事の発展には昔から起伏があるものだ。
 段階ごとに成果もあれば、試練もある。

 ロシアは産業構造が単一的で、市場化の水準が高くない。
 インドはサービス業に過度に依存し、工業化の水準が高くない。
 ブラジルと南アフリカは所得分配問題が先鋭化し、天然資源に過度に依存している。
 中国は国家の発展モデルの重要な転換に直面している。

 その上BRICSは歴史、文化、発展水準が様々で、利益上の訴えも当然全てが同じとはいかない。
 このためBRICSが経済発展においていくつかの調整が生じ、協調においていくつかの溝が生じることは避けがたいことであるが、これらは成長過程の悩みに過ぎない。

 世界の潮流は蕩々たるものだ。
 長期的視点からBRICSを見る時、われわれはBRICSが気運に乗じて生まれた、勢いに乗じて成長するものであり、将来性に疑いの余地はないことを知る。
 BRICSは国土面積で世界全体の26%、人口で42%を占める。
 経済構造は実体経済を柱とし、工業化と都市化が勢いよく進行しており、内需の成長は力強い。
 世界経済の発展においてBRICSが重要な役割を発揮しない理由はない。
 世界の工場である中国、
 世界のガソリンスタンドであるロシア、
 世界のオフィスであるインド、
 世界の原料基地であるブラジル、
 アフリカの橋頭堡(きょうとうほ)である南アフリカ
は補完性が強く、長所を取り入れ短所を補い、有無相通じることをしない理由はない。
 公正で理に適った国際政治・経済の新秩序の確立がすでに新興国と途上国の一致した訴えとなっているという大きな背景の下、新興国と途上国の一員かつ代表として、BRICSは必ずや協力を強化し、新興国と途上国のために国際社会における一層の発言権と決定権を勝ち取る。

 BRICSという概念を初めて提唱したゴールドマン・サックスの元チーフエコノミスト、オニール氏はBRICSの地位と役割について「BRICSの基調がこの時代の基調だ」と説明した。

 第5回BRICS首脳会議が南アフリカ・ダーバンで盛大に行われている。
 各国は政治、経済、金融、貿易、発展など各分野で全方位的な協調と実務的協力を繰り広げる。
 BRICS首脳はアフリカ首脳との対話も行う。
 BRICSとアフリカという希望に満ちた大陸との協力は日増しに緊密化する。
 BRICSの発展は平和・発展、協力という時代の潮流に沿ったものであり、強大な生命力を持つと言える。
 BRICSの未来は夢ではなく、現実だ。

(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/内山)



jiji.com (2013/03/31-16:06)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2013033100106

「大国外交」に自信=脅威論払拭に懸命-習中国主席が初外遊

 【北京時事】中国の習近平国家主席は31日、ロシアやアフリカ国家への歴訪を終え、帰国した。
 最高指導者となって初の外遊では、超大国の米国を意識しつつ、世界第2の経済大国として国際社会での影響力拡大を目指した。
 同行した王毅外相は外遊を振り返り
 「中国の特色ある『大国外交』の成功的な実践となった」
と自信を示した。

 最初の訪問国ロシアでは「全方位的な戦略的協力関係を強化していく」(習氏)ことで一致し、日米ににらみを利かせた。
 南アフリカで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席し、「新興国のリーダー」の存在感を印象付けた。
 アフリカではタンザニアなど友好国にインフラ整備など経済支援を確約。
 アフリカに関する演説では今後3年間で200億ドル(約1兆9000億円)の借款を提供する方針を確認し、
 「国際状況がいかに変化しても、中国は常にアフリカの友人でありパートナーだ。
 運命共同体だ」
と関与強化をアピールした。

 一方で中国脅威論に対し「必要のない懸念だ」と反論するなど大国化に伴う警戒感の払拭(ふっしょく)にも努めた。
 王外相はアフリカ進出を「新植民地主義」とする批判に対し、
 「あるアフリカ指導者は1000人もの聴衆の前で『そうした魂胆を持った考えに惑わされることはない』と明言した」
と中国を擁護する発言があったことを強調した





【中国はどこへむかうのか】


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