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JB Press 2013.04.04(木) Financial Times:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37509
中国経済が転倒しかねない理由
日本も経験した減速、低成長モデルへの移行を管理できるか
(2013年4月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
今後10年間で中国の経済成長は鈍化する。
恐らく急減速するだろう――。
これは意地の悪い部外者の見解ではない。
中国政府自身の見解である。
問題は、この成長の鈍化がスムーズに進むのか、それとも急激になされるのか、だ。
その答えは、中国自身の将来のみならず、世界の大部分の将来をも左右する。
中国の公式見解が公表されたのは、中国国務院発展研究センター(DRC)が影響力のある外国人と中国政府高官を一堂に会して先月開催した中国開発フォーラムでのことだった。
ここで配布された背景説明書の1つに、DRCのエコノミストたちによる論文
「今後10年間の見通し:
潜在成長率の低下と新たな成長局面の始まり」
が含まれていたのだ。
これによると、2000年から2010年にかけて年10%を超えていた中国の経済成長率は、2018年から2022年にかけては年6.5%にとどまる。
この成長の減速は、2010年第2四半期以降の成長率低下とも符合するという。
■「中所得国の罠」か「自然着陸」か
論文では、この減速の理由は2つ考えられるとしている。
☆.具体的には、中国が「中所得国の罠」という産業発展の中断状態に陥っているか、
☆.先進国に追いつき始める時に生じる「ナチュラルランディング(自然着陸)」に対処しているか
のどちらかだという。
後者のシナリオは、1970年代の日本と1990年代の韓国で実現している。
10%の経済成長を35年間続けてきた中国にも、ついにその時がやってきたというわけだ。
成長鈍化の見立てが正しそうだと論文の執筆者たちが考える理由は以下の通りだ。
●.第1に、インフラ投資の潜在的な可能性は「著しく低下」している。
中国の固定資産投資に占めるインフラ投資の割合は、
過去10年間で30%から20%に縮小した。
●.第2に、資産のリターンが低下し、過剰設備が増大している。
限界資本係数(ICOR)――1単位の投資がどの程度の経済成長をもたらすかという尺度――は2011年に4.6という1992年以降で最も高い水準に達したが、現在では同じ1単位の投資をしてもこれほどの成長は実現しなくなっている。
●.第3に、労働供給の伸び率が急速に低下している。
●.第4に、都市化はまだ進行中だが、そのペースは鈍化している。
●.第5に、地方政府の財政や不動産分野でリスクが増大している。
これだけの理由が揃った以上、低成長への移行は始まったと考えてよい、と論文の執筆者たちは考えており、今後の見通しを経済モデルを使ってより厳格に分析している。
そこで得られた結果のうち最も人目を引くのは、長らく続いた「トレンドの転換」だ。
中国では2011年、国内総生産(GDP)に占める投資(固定資本形成)の割合が49%にまで高まったが、2022年にはこれが42%に低下すると予想されている。
一方、GDPに占める消費の割合は48%から2022年には56%に高まると見込まれている。
また、GDPに占める工業の割合も45%から40%に縮小し、サービス業の割合が45%から55%に急拡大するという。
投資主導ではなく、消費主導の経済になるというわけだ。
供給サイドでは、投資の減速に伴う資本ストックの伸びの鈍化が経済成長減速の最大の要因になっている。
■楽観的な見方もできるが・・・
経済成長の減速が間近に迫っているという見方は、まずまず妥当だと思われる。
しかし、もっと楽観的な見通しを示すこともできるだろう。
米国の調査機関コンファレンス・ボードのデータによれば、
現在の中国の1人当たりGDP(購買力平価ベース)は1966年の日本や1988年の韓国のそれと同じだ。
この水準から日本は7年間、そして韓国は9年間も超高速な成長を続けた。
また、先進国にどの程度追いついたかを示す指標の1つとして米国の水準に対する比率を計算すると、現在の中国は1950年の日本や1982年の韓国と同じ状況にあることが分かる。
これなら、中国の成長余地はさらに膨らむことになる。中国の1人当たりGDPは、米国の5分の1の水準を超えたばかりで、伸びしろはまだかなりありそうだ。
だが、この楽観的な見方を否定する根拠もある。
中国は日本と比べても、ケタ違いに大きい。
だとすると、特に世界経済の中に見いだせるチャンスは相対的に小さいはずだ。
さらに、温家宝前首相がよく述べていたように、
中国の経済成長は「バランスと協調を欠き、持続不能」だった。
この見方は多くの面で正しい。
しかし最も重大なのは、中国の成長が、生産能力拡大の源泉としてだけでなく需要の源泉としても「投資に依存してきた」ことだ。
投資に対するリターンは最終的に消費拡大に左右されるため、一貫して上昇する投資率は持続不能だ。
■中国が直面する3つのリスク
ここで浮上するのが、それよりはるかに悲観的な見方だ。
日本の経験が示したように、高投資・高成長経済から低投資・低成長経済への移行をうまく管理することは極めて困難だ。
筆者は少なくとも3つのリスクを想像できる。
●.第1に、予想される成長率が10%超から例えば6%に低下したら、必要となる生産資本への投資率は劇的に下がる。
一定したICORに基づけば、投資率はGDP比50%から例えば同30%に低下するだろう。進展が早ければ、投資の落ち込みはそれだけで恐慌を引き起こす。
●.第2に、信用の急拡大は、不動産投資をはじめ限界収益が低下していく投資への依存を伴っていた。
こうした理由から、成長率の低下は不良債権の増加を意味する可能性が高い。
過去の成長が続くとの前提に立って行われた投資では特に不良債権が増えるだろう。
中国の金融システム、中でも急拡大している「影の銀行システム」の脆弱性は急激に高まりかねない。
●.第3に、家計貯蓄率の低下を見込む理由がほとんど存在しない以上、予想されている対投資での消費拡大を維持するためには、国営企業を含む企業部門から家計部門への同規模の所得移転が必要になる。
これは実現可能だ。
労働力不足の拡大と金利の上昇は所得移転を円滑にもたらすかもしれない。
だが、たとえそうなったとしても、その結果生じる企業収益の減少が投資の激減を加速させるという明白なリスクがある。
■日本と同じ運命を避けられるか
政府の計画は、言うまでもなく、より均衡が取れていて成長率が低い経済への移行を円滑に進めることだ。
これは決して不可能ではない。
政府は必要な手段をすべて持っている。さらに、経済は依然大きな可能性を秘めている。
だが、投資崩壊と金融混乱を招かずに成長率低下を管理することは、どんな一般均衡モデルが示唆するよりもはるかに困難だ。
長年にわたり最高のパフォーマンスを見せたが、必然的に訪れる減速をうまく管理できなかった経済国は簡単に思い浮かぶ。
日本がその一例だ。
中国は今なお絶大な潜在成長力があることもあり、その運命を避けられるはずだ。
だが、事故が起きる可能性は高い。
1つの偶発的な事故が中国の台頭を完全に止めてしまうとは思わない。
だが、向こう10年間は過去10年間よりもずっと厳しい時期になるだろう。
By Martin Wolf
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ブルームバーグ 更新日時: 2013/04/15 14:50 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ML9XF06TTDSM01.html
中国1-3月GDP、予想外の鈍化-世界的な減速懸念を喚起
4月15日(ブルームバーグ):中国の1-3月(第1四半期)の国内総生産(GDP)は予想に反して伸びが鈍化した。
工業生産の拡大ペース減速などが響いた。
GDP統計を受け世界的な成長鈍化の懸念が強まり、株価と商品相場が下落した。
1-3月期のGDP は前年同期比7.7%増加。
国家統計局が15日発表した。
ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト41人の予想中央値は同8%増だった。
昨年10-12月(第4四半期)の伸び率は7.9%。3月の小売売上高は市場予想と一致したが、3月の工業生産は予想を下回る伸びにとどまった。
ブルームバーグが入手した草案によると、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(WEO)で米成長予想の下方修正が見込まれているほか、著名投資家のジョージ・ソロス氏はドイツの9月末までのリセッション(景気後退)入りの可能性を指摘。
さらにこの日の統計で世界的な景気回復が勢いを失っているとの懸念が強まった。
ユーロ圏債務危機に伴い中国の輸出見通しが不透明な中で、インフレ減速は李克強首相に一段の内需拡大の余地をもたらす公算がある。
JPモルガン・チェースの中国担当チーフエコノミスト、朱海斌氏(香港在勤)は、
「期待外れの指標は内需の弱さで景気回復が予想よりもはるかに弱く、不安定なことを示している」
と分析。
今年これまでの信用の伸びが4-6月(第2四半期)の成長加速を支援する可能性があるとした上で、当局は医療や環境保護などの分野で支出を増やすほか、いわゆるシャドーバンキングの抑制の取り組みを緩める可能性があると指摘した。
■株と商品下げる
日本時間午後1時13分現在、MSCIアジア太平洋指数は0.9%安。
中国株の指標である上海総合指数は現地時間午前11時半(日本時間午後0時半)時点で0.9%安。
24の資源や農産物をまとめたスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のGSCIトータル・リターン指数は1.6%下げている。
ニューヨーク原油先物相場は2.5%安の1バレル=89ドル。
3月の工業生産 は前年同月比8.9%増。
エコノミスト予想中央値は10.1%増、1-2月は前年同期比9.9%増だった。
3月の小売売上高 は前年同月比12.6%増と、予想中央値と一致した。
1-3月の都市部の固定資産投資は前年同期比20.9%増。
ブルームバーグがまとめた市場予想中央値は21.3%増だった。
1-2月は同21.2%増。
原題:China Growth Loses Momentum in Blow to Global Expansion:Economy(抜粋)
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【中国はどこへむかうのか】
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